今回は信濃屋オリジナルボトルとして、「THE JAPANESE SAILING SHIP」“帆船ラフロイグ”をご紹介いたします。
今回選定した一樽は、ラフロイグ蒸溜所、2004年蒸溜 16年熟成です。樽種はリフィルのホグスヘッド樽で熟成され、シングルカスク/カスクストレングスで瓶詰致しました。現在では表記することは非常に難しくなった、【ラフロイグ表記】のラフロイグです。
当時コロナ禍であった、2020年頃、現地よりサンプルを取り寄せ、慎重にテイスティングを行い、当時でも非常に高額なカスク、購入の判断は難しいものでしたが、ラフロイグ表記が困難になるであろう将来の為に購入していたカスクです。
2000年代前半蒸留ラフロイグに感じられる、力強いヨードのようなスモーキーさが主体的ながら、奥に生ハムメロンの様なニュアンスを感じていました。ボトル到着後も定期的に試飲を重ねながら、このウイスキーの状態を確認してきましたが、経年していくにつれて最近ようやく、奥から甘さや塩感、旨味を伴うフルーティーさが感じられる様になり、リリースにベストなタイミングを迎えつつあります。
この『帆船ラフロイグ』は、かつてのオールドボトル、セスタンテ 「シップラベル ラフロイグ 1968 16年」へのオマージュです。今はもう無いイタリアを代表するボトラーズメーカーであり、インポーターであったセスタンテ。かつて訪れた海外のウイスキーフェスティバルで当ボトルを見つけ、その素敵なラベルに惚れ惚れし、また、口にしてその味に感動した一本です。
今回のオリジナルラベルは、明治期から昭和の時代を生きた、日本画家 上原古年の「富士に帆船」の一部を同じ構図で配置しました。偶然にも同じ「16年」熟成です。
テイスティングしましたが、開戦直後は力強い骨太なフェノリックピートが主体的ですが、時間経過と共に、緊張の糸が緩和されていき、次第にこの蒸溜所が持つ生来の優しい一面の素晴らしさを見せてくれるようになります。海風を纏いながら、特徴的なフローラルや心地よい甘さが現れ、生ハムや緑果肉のメロン。その甘さを引き立てていくようなソルティ―なニュアンスが複雑さを与えています。
偉大な先人の足跡を辿りながらも、現代のボトラーとして温故知新の精神の姿勢を詰めた一本です。どうぞご賞味いただけますと幸いです。