過去、数世代に渡り大手メーカー向けのワイン作りを
続けてきたパスケ家。転機となる
「ジャン-リュック パスケ」ブランドは1977年誕生。
先代のJean Luc(ジャン・リュック)氏が立ち上げ、
現在は息子さんのJean(ジャン)氏、そして奥様の
Amy(アミー)さんに経営が引き継がれ、
夫婦二人三脚でコニャックをつくる家族経営の生産者。
生産拠点はグランド・シャンパーニュ地区に
ありますが、プティット・シャンパーニュ地区と
隣接する立地にあり、それぞれに8ヘクタールと
6ヘクタールの合計14ヘクタールの畑を所有。
≪Jean Luc(ジャン・リュック)氏≫
パスケ家の特筆すべき点は、ブドウの栽培から蒸留、
熟成、瓶詰めまで行っているプロプリテール生産者で
ありながら、大手メーカーには原酒を供給していない
非常に稀な生産者であること。
また、自家生産品だけでなく、コニャック造りを
廃業されて世に披露されることがなくなった良質な
樽原酒を購入して、自家貯蔵庫に眠らせています。
それらのトレーサビリティが明確な他の優良生産者の
樽原酒を、自社ブランドの名を冠してネゴシアンボトル(ウイスキー業界でいうボトラーズ)としても瓶詰を
行っており、コニャックの素晴らしさを側面からも
伝えていることが挙げられます。
現在、自家生産品の定番ラインナップは、
先代が企画したボトルの一部と、主に息子夫婦が
企画した現行ボトルの2つが流通していますが、
現行ボトルは 1995年以降にオーガニック転換した後の
ブドウを原料にして作られたオーガニック規格品です。
ほぼ同時期のタイミングで絶滅危惧品種の
フォル・ブランシュの作付けに着手するなど、
伝統と名声にあぐらをかかず、
常に革新を続ける優良生産者です。
今回のボトルは自家生産品ではなくネゴシアンもの。
中森氏いわく、自他は関係なく、ひとつの偉大な
コニャックへの尊敬の念と愛をダイレクトに感じた
ことが、今回のボトルを瓶詰するに至った経緯との事。
中身はプティット・シャンパーニュエリアにて
アンドレ・ベルタンドー氏がブドウ栽培から蒸留まで
手掛けたCognac d’André1973。(現在は廃業)
アンドレ氏が94歳で亡くなるまで、40年以上にわたって
同氏のサリニャックのセラーで熟成されていたもの。
アンドレ氏は第二次世界大戦の戦争捕虜となりながらも
無事に帰還して、家族のコニャック生産を引き継いだ
苦難の経歴の持ち主です。
そのコニャックに対する愛情と功績に敬意を払い、
パスケ家が樽を引き継ぎました。
同じスペックの別樽(シスターカスク)は、
Whiskyfunで92ポイントの高評価を得ています。
“クレイジーコニャック”として世界のモルトマニアにも
注目されたスペックは、カテゴリーの枠を超えた
ポテンシャルの高さも感じられます。
《色》
オレンジがかったブラウン。
《香》
プティット・シャンパーニュ地区らしいトップノート
から出てくる華やかさに加え、カスクストレングス
ならではの強く放つ芳香。 注ぎたてはこの時期に桜を
思い浮かべるフローラルさ。
徐々にフローラルさが消えてくるとウッディな
古樽の深みが顔を出す。 その中にはブラックチェリーや
ドライイチジク、シナモン、レザー、炒ったクルミ。
《味》
プティット・シャンパーニュ地区の柔らかさを覆う
カスクストレングスのボリューム。 ブレンドして出る
複雑さに対しシングルカスクならではピュアさが迸る。
長期熟成を感じる樽のタンニン。
時間が経ちアルコールの角が丸くなって甘みが
出てくるとイチジク、紅茶、ペッパーのスパイス。
《余韻》
飲んだ後に上がってくる余韻にはパッションフルーツ。
最後は鼻の抜けにピーチ。飲み終わったグラスの
残り香は茶葉。 グラスが白く変化出来る頃には
マンゴーが出る。
《総括》
シングルカクス/カスクストレングスならではの、
ゆっくりと時間をかけて変化する味わいを楽しめます。
過去50年でのコニャック最高ヴィンテージ1973らしい
コニャックの貴熟香“シャランテ・ランシオ”の
醍醐味が溢れるコニャックです。
(Tasted by BAR DORAS オーナーバーテンダー 中森保貴氏)
東京・浅草に2005年4月開店。
品揃えはコニャックだけではなく、シングルモルト、
スピリッツ、リキュールの現地仕入れボトルや最新の
話題作からオールドまでヨーロッパの洋酒文化に
出会える幅広いボトル達。
また、オーナーバーテンダーの中森氏が現地で
直接仕入れるやアンティーク調度品やマスター自ら
作り上げるバーフードはその魅力を更に盛り立てます。
"DORAS"とはゲール語で「扉」を意味し、
その”扉”の中のヨーロッパ各国に居るような
非日常的な雰囲気を体感できる名店は、多くの飲み手や
バーテンダー、ゲストを惹きつけて止みません。
-Mr.Yasutaka Nakamori-
(中森保貴氏)
BAR DORAS オーナーバーテンダー。
信濃屋での勤務を経て、その後、都内数軒の
BARでバーテンダーの研鑽を積む。
毎年、欧州各地を訪ねて、生産者だけでなく、
生産地、その街、その文化を吸収し、BAR DORASを
通して、ヨーロッパ各国の文化や伝統を伝道しています。
また、コニャックはもちろんのことシングルモルト、
カクテルは言うに及ばず、バーフードや日本文化への
見識・こだわりも深く、常に探究心を忘れない
プロフェッショナルバーテンダーの一人です。